「無頼」に出会って本当によかった。無頼を読んでいなければ土方歳三という人に対する私の認識は 間違ったままだったと思う。 (というより、新撰組をほとんどよく知らないままだっただろう。)
無頼と出会ってすぐの頃はまだ沖田さんのファンだった。もちろん、今でも沖田さんは好きなんだけど、 何度も何度も無頼を読んで、いろんな本を読んで、時間が経っていくほどに、自分でも不思議なほど土方さんに 惚れていった。(副長のファンの人には何の不思議もないってか?)殊に無頼の中の土方さんは 男の中の男っていう描かれ方なので尚更だ。
無頼の土方さんには名言が多い。胸がきゅんとなるようなセリフばっかりなのよね。
その中でも1位はやっぱり、
「武士道なんてのは、行動と落とし前だ」
これ読んだとき‘葉隠’の「武士道とは死ぬことと見つけたり」の一節が浮かんだ。 それまでは言葉どおり捉えると死ななきゃいけないのか?と何となく納得いかなかったんだけど、 次の一言でストンと腑に落ちた。
「生きざまあっての死にざまだ」
どう死ぬかとは、どう生きるかなんだね。そして武士として死ぬための生き方。蔵田君の墓の前で言った、 「根性は生きてるうちに見せやがれ」というのも、土方さんが武士道とは何かを本能で 理解しているからこその一言ではないだろうか。ああ副長、あなたはやっぱり武士としても一級品。 そして土方さんにこれを言わしめた作者は本当にすごい。
案外マイナーなところで、芹沢暗殺の後斎藤さんのことで沖田さんに言った、
「・・・恨んでいいぜ」
この一言、そのときの表情も合わせて、もう切なくて胸キュンで、《男は黙って……》の世界だなあ、
なんて思っちゃった。もちろん、無頼の中の斎藤さんは土方さんとどっこいの「面倒くせぇ野郎」だから、
ちゃんと理解してくれるんだが、現実の新撰組の中ではきっと(土方さんがこういう人だったという仮定で)
ずいぶん誤解したまま死んでいった隊士がいただろうね。
もう一つよろめいた言葉。解散問題での殴りあいの後、近藤さんに言った
「あんたあっての新撰組だ。代えはきかねえ」
という一言。いろんな本を読んでも、土方さんが死ぬまで近藤さんを新撰組局長として
背負っていたことは言及されている。大雑把にでも新撰組の歴史を読んでいくと、どうしても近藤さんには
共鳴できなくなっていくが、それでも土方さんの近藤さんに対する気持ちは変わらなかったということを
作者はどう描いてくれるだろう__と思うと、やっぱりこれしか言うことはない。
どこでもいいから 【無頼】 を再開させてくれー!
「無頼」:新撰組・斉藤一が主人公の漫画、主要人物が超美形!
(岩崎陽子著・角川書店/秋田書店)
※ この後、連載の再開ではないが、版元を変えて読切りで新作が発表された。