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能書三昧

六月は真紅の薔薇

 三好徹著「沖田総司」の副題。

 作者も自負していると書いている通り、この作品の沖田総司は大概の人が抱いている沖田総司像を裏切らない、 沖田総司らしいと思える小説である。
  この小説では総司が惚れた女性が労咳のため、それが伝染ったということになっている。 作者の創作部分だが、作者後書きで、沖田氏縁者として葬られた女性がいたことは事実であり、あながち 的外れでないと書いている。史実としてはそういう間柄の人ではなかったようだが、ファンとしては作者の話に 軍配を上げたくなる。

  司馬氏の「血風録」では、総司の思い人は医者の娘だったが、あの話は実らぬ恋だったので ちょっと寂しい。この小説の中では、沖田総司は死んでもいいという覚悟で女性を愛するので、かなり切ない。 でもって、土方さんが別れさせようとしていろいろ忠告する場面も、それはそれで副長の気持ちも分かるという感じ。 2人ともいい人に書かれていて、だからよけいにね、切ない。

 小説の中で歴史を変えられるものなら、沖田総司を病気になんてしたくない、これ、ファンの心理として当然。 鉄砲の時代なんておいといて、白刃の戦いで存分に総司を戦わせたいというところ。

 それにしても、実際のところ、沖田総司という人は女に惚れたんだろうか? なんか色恋に無縁の青年というイメージがあるんだなぁ。
  でもって、「無頼」の世界では、女気はなくてもいいかな?なんてね。ファンなんて勝手なもんだ。

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