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能書三昧

菊一文字

 無頼の連載をリアルタイムで読んでいた人も、私のように連載がストップしてからコミックで無頼に出会った人も、 等しく初めて目にする無頼の新作、”菊一文字”。作者はもちろん、秋田書店にも本当に感謝します。 あの名場面を踏まえた入り方は、2年のブランクをひとまたぎでした。
 今までのいきさつからすると、「無頼」「無頼魔都覚醒」とはまったく違うバックグラウンドでお話が 始まるのかも知れない、と覚悟していたので、今後の読み切り新作も今回のように今までのストーリーをベースに 進めてもらえるのであれば、これはもう、連載再開とほとんど変わらないではありませんか。「魔都覚醒」の 天海外法陣の謎に関しては、いきなりあの続きを始めるのは無理があると承知しているので、そういう意味では 「魔都覚醒」の再開ではないんですが、でも、沖田さんはあの後どうなるの___という思いは皆あったでしょうから、 ”菊一文字”は十分満足だと思います。

岩崎陽子オフィシャルサイト
NEXT STREET

 さて、皆さんもご存知の司馬遼太郎著”菊一文字”とは大いに趣の違うお話。まるで伝説のように言われてきた 「沖田総司の愛刀」という話にはしなかった今回の”菊一文字”であります。ま、実際の話、伝説は史実にほとんど 否定されているんですが、一ファンのイメージとして私の中では、沖田総司と菊一文字はセットだったんですよね。 ところが、刀にも沖田さんにも精通?している斎藤さんに「沖田さんの好みじゃない」と言われると、そうなのか、 好みじゃないのか――なんてあっという間に納得したりして。そして今度は、斎藤さんが沖田さんのイメージで 選んだというあの刀はいったい何だろう?無銘ったって、なんかあるだろう、という興味がもくもくと湧いてきて…… だって、鮮やかで、透明で、深くて、しかも強靭な刀がそこらにごろごろあるわけないじゃない! 新撰組随一の腕前の沖田さんを納得させた刀ですよ。知りたい!岩崎陽子、無頼ファンのツボをよく心得ている。

 刀を通して通じ合う男の友情。ってな風に言葉にするとクサイんですが、見立て一番の斎藤さんの 沖田さんへの思いと、それを受けて「買いかぶり過ぎ、だけど恥じないようにがんばる」と言った沖田さんの 斎藤さんへの気持ち。結局菊一文字はただのお茶請けじゃん。ほんと、ステキ!!あくまでも大人も堪能できる 深みのある漫画であるところがすばらしい。今後ますます期待してしまいます。

 作者公式サイトの情報によると、年内にもう一本無頼読み切りの予定があるらしい。大いに楽しみ。 無頼といえば沖田さんと斉藤さんが最高なんですが、土方さんがメインの話も読みたいと思う、欲張りな私です。

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