京極堂シリーズが映画になる!というので結構アオって宣伝していたなぁ。予告編はそれはもうおどろおどろしく、 いしだあゆみの発作的叫び声がまたおどろしくて。宣伝サイトもよく出来ていた。ただ、見る前から、 京極堂が堤真一はちょっと……それに関口巽も永瀬正敏ってイメージじゃないなぁとは思っていた。
実際に見てみたらどうだったでしょう?
やっぱり堤真一の京極堂はいただけない。まず滑舌が悪すぎる。この映画全体を通して、摩訶不思議な
雰囲気を出すためか台詞の音声が小さいので余計に聞き取れない。これ、映画館で見ていたら今何て言った?
って場面が多々あったろう。しかも、京極堂の台詞であるからして小難しい説明の長台詞なので、
一息入れてるってのが分かる部分もあって。まぁ、私の脳内の京極道が再現されるわけはないのだから、
しょうがないんですが。
一番興醒めなのは、やっぱり着物を着慣れてないってところかな。常に着物を着ているはずの京極堂なのに、
なんかしっくり来ないし。歩き方とか所作が着物のそれじゃない。品がないんだな。居間で本を読んでいる京極堂は
正座で通して欲しかった。小説の京極堂はもっと丹精で几帳面でもっと皮肉たっぷりだ。そこらへんの京極堂らしさが
なかったなぁ。(もちろん、原作者の京極夏彦が監修しているはずだから、ド素人が文句言う筋合いじゃないんだけど)
木場修はまぁ、あんなもんでしょ。宮迫さん、ドス利かせるところは上手いよ。ただもう少し上背のある人だったら
カッコよかったんだけどねぇ。榎さんは長身で眉目秀麗ってところが配役を限定しちゃうから、
阿部ちゃんは悪くないと思う。ぶっ飛ぶほどの非常識さは今回なかったけど。榎さん主役の物語を
映画化するとしたら阿部ちゃんだと物足りないかなぁ。
律子はダメ。活発だけど無垢で上品でないと。田中麗奈、知性と品のよさを感じさせてくれませんでした。
文句ばっかりやなぁ。
一つだけ、予想に反して良かったのは永瀬正敏の関口。いつも夢の中を彷徨っている鬱病患者のもっさりを
うまく演じていたと思う。もっと小太りのイメージだったんだけど、その辺はまぁいいでしょう。
その他はどうってことない。大体小説そのものが夢か現かという描写で読者を迷路に誘い込むように 書かれているんだから、影像にするのも色々大変だよ。そういう意味では全体的には原作のイメージどおりに 出来ていたと思う。ヒロイン役は誰でも良かった。(単に私が原田知世を好きでないだけです)
一応見たかっただけなので、レンタルで大正解。
この映画で一番興味をそそったのは京極堂(店の方)の内部でした。和綴じの本が山盛り。それと
いつも京極堂が座っている居間の後ろに山と詰まれた本・本・本。ただ、ちょっときれいで立派過ぎるよね、
古本屋にしては。もっと狭くて暗くて埃だらけっていうほうがそれらしかったかも。
小説の京極堂シリーズは一応全作制覇。
しかし、どこかのサイトで「どれだけストーリーを覚えている読者がいるか疑問だ」と書かれていたとおり、
いったいどんな事件で誰が犯人でどう謎解きされたか、どの作品でも覚束ない。だっていつも関口の幻の世界に
いるみたいなところがあるし……。かといって、読み直そうにも、「またあの世界に行かないといけないのか」
と思うだけで二の足踏んじゃう。
ただ単に「この世には不思議なことなど何もないのだよ」という
京極堂の台詞が聞きたいだけなんだよなぁ。単なるミーハーじゃん。 エヘヘ、オソマツ!